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館内展示

第74回
書の美、文字の巧

平成28年(2016)9月17日(土) ~ 12月4日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第74回「書の美、文字の巧」の展覧会図録表紙画像

〝書〟は、もともとは〝筆〟と〝者〟からなり、文字で何らかの物事を書きつける、という意味を持ちます。書の始まりである漢字が象形文字から発展したことで、先人たちはその字形に多様な造形美を見出し、それを表す毛筆の種類や筆の運び方、墨の濃淡などの工夫によって実に豊かな表情を生み出し、文字の構成や書写する多彩な紙等との調和を図り、美的表現を追求しました。また文字は、文字そのものが意味を持ち、さらに言葉となり、文章となって様々に表現される事柄や感情、考えを伝えるという重要な役割を担い、その巧妙な使い方で豊かな表現を生み出します。本展では、中国の書聖・王羲之の書に始まり近代に至るまでの作品を通して、こうしたわが国の豊かな書、優れた文字の文化を紹介します。

中国・唐の影響を受けながら、わが国独自の文化を発展させた平安王朝期の美しい仮名や優美な文字、美しく装飾された紙との調和。書風が確立し、史実を伝える記録が多く残る中世。そして、伝統的な書の形が広まり、様々な学識が深まる中で多彩な書が展開する近世。さらに幕末から近代初めの動乱期に活躍した人たちが残した力強く、また興味深い記録の数々など、当庁三の丸尚蔵館と書陵部が所蔵する名品を通しての本展は、書の様々な魅力を十二分に鑑賞していただけるものです。「書は人なり」という言葉のとおり、様々な人物による様々な文字は、それぞれの人柄による造形美が溢れています。時空を超えて、〝書〟の魅力的な美しさと、〝文字〟が巧みに伝える様々な史実を愉しんでいただきたいと思います。