皇居三の丸尚蔵館について

近世以前の美術

 江戸時代以前の美術品には、各時代の書跡、絵画、工芸を代表する名品、優品が多くあります。
 書跡には、中国・4世紀の書聖、王羲之(おうぎし)搨本(とうほん)喪乱帖(そうらんじょう)》や小野道風(おののみちかぜ)ら平安時代から鎌倉時代にかけての名筆による書写本・古筆類・漢籍、そして室町時代以降の歴史上著名な人物の手になるさまざまな作品が含まれています。一方、絵画では、《春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)》、《蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)》などの中世絵巻をはじめ、狩野探幽(かのうたんゆう)の《源氏物語図屏風》などの旧桂宮家の遺品のほか、狩野永徳(かのうえいとく)唐獅子(からじし)図屏風》、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)動植綵絵(どうしょくさいえ)》という近世の代表的な絵師の傑作が中心を占めています。また、工芸は、奈良時代の法隆寺献納宝物(けんのうほうもつ)、そして《蔦細道(つたのほそみち)蒔絵文台・硯箱》ほか宮中調度の漆工品の数々が、名品としてひろく知られています。

近代の美術

 明治時代以降の近代の美術品は、御慶事を祝っての献上や、博覧会や展覧会における御買上(おかいあげ)、そして御下命(ごかめい)や宮内省による制作依頼など、様々な経緯で皇室に納められました。当館の収蔵品も、帝室技芸員の作品を中心に、展覧会への出品作など、絵画、工芸ともに充実した内容となっています。日本画では、明治時代の荒木寛畝(かんぽ)や川端玉章(ぎょくしょう)をはじめ、大正、昭和時代に活躍した横山大観(たいかん)の作品が数多く収蔵されているのも大きな特徴です。工芸は、金工の海野勝珉(うんのしょうみん)蘭陵王(らんりょうおう)置物》や七宝の並河靖之《四季花鳥図花瓶》など明治時代の傑作群を軸とした多彩な内容となっています。また、木彫家の高村光雲(こううん)や、高橋由一(ゆいち)五姓田義松(ごせだよしまつ)、山本芳翠(ほうすい)ら洋画家による優品が含まれた彫刻と洋画の二分野も重要な位置を占めています。このほか、美術に近接した視覚表現ジャンルである写真作品も、明治時代のものを中心に数多く収蔵されています。

海外の美術

 海外の美術品の中では、明治時代初頭の洋画界と関わりの深かった19世紀イタリアの画家アッキレ・サンジョヴァンニやジュゼッペ・ウゴリーニによる、当時の各国元首の肖像画のほか、アール・デコ期の工芸品など、近代ヨーロッパの美術品が代表的なものとして挙げられます。また、皇室が世界の国々と交際される中で、親善のかたちとして贈られた、各国の民族色豊かな絵画、工芸のコレクションも見逃すことができません。


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