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館内展示

第63回
三笠宮家ゆかりの染織美-貞明皇后、いつくしみの御心

平成25年(2013)7月27日(土) ~ 9月29日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第63回「三笠宮家ゆかりの染織美-貞明皇后,いつくしみの御心」の展覧会図録表紙画像

三笠宮崇仁(たかひと)親王殿下は、大正4年12月2日に大正天皇と貞明(ていめい)皇后の第4皇男子としてご誕生になり、澄宮(すみのみや)という称号を賜りました。そしてご成年式に際し、三笠宮家を創立されました。

その三笠宮家には、殿下がご幼少時にお召しになった御服類の数々が、戦火をくぐり抜けて、大切に保管されてきました。これらは、宮中三殿に初めて拝礼された折の御服、お誕生日などにお召しになった晴れ着のほか、大正11年に学習院初等科へ入学されてからの制服、野球のユニホーム「AS」(青山澄宮チーム)等も加わり、殿下の活発なご成長の様子を伝えています。

このうち、晴れ着の数々は、いずれも振袖に仕立てられ、紅や桃色、萌黄(もえぎ)浅葱(あさぎ)色などの鮮やかな色調に染め上げられた綾地や縮緬地等に、吉祥や花枝の模様が美しく刺繍されています。江戸時代以来の伝統的な意匠、技術を残しながらも、大正期ならではのモダンさもうかがえ、その装飾技術に工夫が示されています。また、大正8年のお誕生日に初めて袴を着けられて後、時に応じてお召しになった黒羽織や袴等にも洗練された瀟洒(しょうしゃ)な意匠がうかがえます。このほかに、着物の上にお召しになった(つや)やかなビロード地に裾模様が刺繍されたマント等も伝えられています。

今回、ご紹介する機会を得たこれら三笠宮崇仁親王殿下ゆかりの愛らしく美しい御服の数々には、貞明皇后の母としての御心(みこころ)が重ねられ、愛情を注がれた様子を感じることができます。貞明皇后の想いが込められ、殿下が大切にされてきた品々を通して、大正期の優れた染織技術の粋とその意匠美にも触れていただければ幸いです。