終了

館内展示

第56回
幻の室内装飾-明治宮殿の再現を試みる

平成23年(2011)9月23日(金) ~ 12月25日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第56回「幻の室内装飾-明治宮殿の再現を試みる」の展覧会図録表紙画像

明治21年(1888)に竣工(しゅんこう)した明治宮殿は、外観を和風建築、内部を西洋式の椅子座とした空間として、その室内装飾が施されました。これは言うまでもなく、明治という新時代、近代化を歩み始めたわが国が、外交を通じて世界諸国の一員として活躍していく中で、国の公的な諸事を行うための中心的建物となる宮殿を、西洋を意識して造営したためでした。

官民一体となって進められた国の大事業において、明治宮殿の室内装飾は、西洋からの新しい意匠や技術も加えながら、わが国の伝統的な意匠や優れた技術を十分にいかして仕上げられました。また、室内に飾り置く花瓶などの調度の品々も、当時を代表する作家や技術によるものでした。国の近代化を象徴する存在でもあった明治宮殿は、日本美術史においても、技術や意匠の伝統と刷新が混沌(こんとん)とし、職人や作家たちがそれぞれの道を模索する中で、大きな指針を示して影響を与えた重要な存在だったのです。

竣工から昭和20年5月の焼失までの約57年間、大きく変わりゆく日本の姿を見続け、皇室の御活動を支える場として使用された明治宮殿が、幻の存在となって、60年以上が経過しました。すでに明治宮殿を知る人もわずかとなり、その存在が忘れられようとしている現在(いま)、改めて、当時の資料や伝存する作品を通して、明治宮殿の存在にスポットを当てたいと思います。限りある展示室の中で、明治宮殿表宮殿の室内を再現しようとする今回の試みを通して、明治宮殿が近代の大きな基点となっていることを再認識していただければ幸いです。