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館内展示

第55回
ひろげる、たのしむ、小粋な日本画-近代画帖の美

平成23年(2011)7月23日(土) ~ 9月11日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第55回「ひろげる,たのしむ,小粋な日本画-近代画帖の美」の展覧会図録表紙画像

画帖(がじょう)とは、一人、又は複数の画家の絵を台紙に貼り込み、一帖の折本に仕立てた絵画作品の一つの形式です。古くは、明時代の中国の影響を受けていろいろな渡来画を集めたり、『源氏物語』を題材にするなどして、鑑賞とともに調度として飾り置くことも目的とした美しい装丁を伴って画帖は制作されました。さらに江戸時代も後半になると、流派を越えた絵師や文化人の交流が盛んになる中で、画帖の内容は幅を広げて流行しました。

明治時代以降、画帖という形式は、画家たちの様々な絵を手頃な大きさにまとめられることから、国内外への贈進品として好まれ、各種の記念行事や祭典の折に、その慶祝の意を込めて制作されることが多くなりました。その後大正、昭和と時代が移り変わるに従って、画帖は次第に姿を消していきます。しかし、そうした中でも皇室の御慶事に際しては、各美術団体や自治体から数多くの画帖が献上されました。そうした理由から、当館には近代の画帖がまとまって収蔵されており、これが当館の近代日本画の一つの特色ともなっています。これらの画帖では、当時の画壇を代表する画家たちの贅沢(ぜいたく)な共演を楽しむことができるとともに、小画面であればこその小粋で洒落(しゃれ)た感覚を味わうことができます。また趣向を凝らした飾り金具や美しい裂地(きれじ)を用いた装丁も見所です。

今回の展覧会では、このように調度としての品格を備えながら、多彩な絵で見る者の目を楽しませてくれる画帖の魅力を紹介します。近代以降、皇室への献上を通じて描き継がれてきた画帖という形式を、改めて知っていただく機会となれば幸いです。