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館内展示

第54回
美術染織の精華-織・染・繍による明治の室内装飾

平成23年(2011)3月29日(火) ~ 6月19日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第54回「美術染織の精華-織・染・繍による明治の室内装飾」の展覧会図録表紙画像

わが国の染織技術の発展は、人々の生活に豊かな彩りを与えました。服飾に限らず、様々な装飾に用いられた染織は、様々な織り方に、染めによる美しい色彩や刺繍(ししゅう)などの加飾技法を加えることにより、時代に応じて華やかな作品を生み出してきました。

染織作品が、ある特徴的な展開を示したのが、明治時代です。近代という新たな時代、西洋文化の移入に翻弄されて混乱した時、京都西陣を中心に、意欲的に染織産業の発展に立ち上がった人々がいました。フランスに学んでその技術や機械を導入し、それをさらにわが国の伝統技術で改良することで、新しい染織品を生み出していったのです。

そうした中、国内外の展覧会、博覧会に、絵画的な図様を染織の技術で表した掛幅や額の作品が登場して高い評価を得るようになりました。友禅技術の改良による天鵞絨(びろうど)友禅(ゆうぜん)、フランスのゴブラン織に学んだ(つづれ)(にしき)(綴織)、そして伝統的な刺繍技術をさらに装飾的に用いた刺繍作品がその代表的なもので、西村總左衛門、川島甚兵衞、飯田新七が中心となって活躍しました。また同時に、明治21年竣工の明治宮殿の室内装飾のための壁張り裂や緞帳などの染織品制作もまた染織業界を活気づかせることとなり、装飾品としての染織作品―美術染織の制作が盛んになったのです。

今回の展覧会では、明治宮殿や離宮などに装飾された美術染織の数々を紹介します。染織品であるため経年変化を受けやすく、色彩の褪色や画面の劣化は否めませんが、これだけ多くの作品が遺っていたことは実に驚くべきことです。これら美しい作品を生み出してきた染織技術の高さと、制作者たちの意気込みを通して、あらためて人の手による文化の再生力の素晴らしさを感じていただければ幸いです。