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館内展示
第27回
工芸風土記・壱-諸国やきものめぐり
平成14年(2002)1月12日(土) ~ 3月10日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館
三の丸尚蔵館の第27回企画展として、「工芸風土記・壱-諸国やきものめぐり」を開催いたします。
当館の収蔵品には、おもに明治期以降に日本各地から皇室に献上された様々な工芸作品が数多く含まれています。このたび新たに企画した「工芸風土記」シリーズでは、それらの多彩な工芸作品に焦点を当てて、地域ごとに異なる技法や材質などの特色を踏まえながら、その魅力を紹介いたします。シリーズ第1回となる本展は、近代から現代にかけて、各地の伝統的な手法を出発点として生み出された陶磁器を大きく三つの要素に基づいて分類することにより、近現代の日本陶磁の特質の一断面をみてみようとするものです。
まず第1のコーナーでは、近現代における古典の解釈のあらわれとして、挑山風の茶の湯のやきものの創出に挑戦した、備前焼(びせんやき)や萩焼(はぎやき)などの現代作品の数々を中心に紹介いたします。それらにみられる焼締(やきしめ)や自然釉(しぜんゆう)の掛かった地肌、さらに、歪みのある器形などは、近代の日本人が挑山川の茶陶の特質ととらえた造型的な特徴を反映したものだったのです。続く第2のコーナーでは、江戸期のやきものを特色づける二つの大きな要素、すなわち、装飾性とつくりものの伝統がいかに近現代に継承されたのかをみます。前者の代表としては、上絵付(うわえつけ)や染付(そめつけ)などの加飾技法を受け継いだ京焼(きょうやき)、有田焼(ありたやき)等の作品が、後者の具体的な例としては、表情豊かな吉祥人物像をかたどった置物が挙げられるでしょう。そして、第3のコーナーでは、小鹿田焼(おんたやき)に代表されるように長い歴史をもち、各地域で庶民に親しまれた郷土色豊かな民窯(みんよう)系の作品などを取り上げることにいたします。また、ここではあわせて、河井寛次郎(かわいかんじろう)ら民芸作家と民芸運動により注目を集めるようになった益子焼(ましこやき)ほか、民窯から出発しつつも、やがて個性的な陶芸家により日常の美を重視した独白の造型を生み出すことになった窯場の作品も紹介いたします。
本展が、近現代の日本のやきものの造型美により親しんでいただく機会になれば幸いです。