終了

館内展示

第67回
明治天皇 邦を知り国を治める - 近代の国見と天皇のまなざし

平成27年(2015)1月10日(土) ~ 3月8日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第67回「明治天皇 邦を知り国を治める - 近代の国見と天皇のまなざし」の展覧会図録表紙画像

19世紀後半に近代国家として歩み始めたわが国において、明治天皇はそのご活動の初期には全国各地への行幸(ぎょうこう)を通じて、実際にその現地へ赴かれることによって各地の風土をつぶさにご覧になりました。その折の記録として、明治初年から普及が始まった写真が広く活用されるようになり、天皇が訪問されなかった場所についても、各地の風景や出来事が写真によって報告されるようになりました。

たとえば、明治5年(1872)に行われた九州・西国への巡幸を皮切りに、同18年まで6回にわたって続けられた六大巡幸では、巡幸先の各地の様子が写真に記録されました。写し出されたのは、歌枕などで知られる名所旧跡のほか、近代化を象徴する建造物や産業、教育など、それぞれの土地固有の歴史と、その一方で新しく生まれ変わりつつあった国土の様子でした。これらの巡幸に伴い、天皇が各地で詠まれた御製や、現地で天皇を迎えた人々の和歌、巡幸に供奉した文学御用掛らの日誌も(のこ)されています。

六大巡幸以後も、侍従や侍従武官等を国内各地に差遣され、天皇のお手元には(おびただ)しい量の写真や報告書がもたらされました。このような形で“天皇のまなざし”は、はるか遠方の土地や記録的な災害、事件から、新たに芽吹いた産業や福祉事業に至るまで、主として写真という視覚的メディアを通じて注がれ続けたのでした。

本展では、書陵部と三の丸尚蔵館に所蔵される古写真や関連資料などから、明治天皇が国土・国民と向き合われるために何に視線を注がれ、心を寄せられたのかに焦点を当てることで、あらためて明治期の日本の姿をふり返ります。