終了

館内展示

第58回
珍品ものがたり

平成24年(2012)7月21日(土) ~ 9月2日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第58回「珍品ものがたり」の展覧会図録表紙画像

珍品とは珍しい品物、めったにない貴重なもの、の意味ですが、今回の展覧会では、作品そのものの珍しさに加えて、作品の成立や今日までの伝来に、伝承も含めて様々な〝ものがたり〟があるものに焦点を当てて、紹介します。

まずは鎌倉時代、我が国を大きく揺るがした出来事、元寇(げんこう)を描いた「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)」は、現在伝えられている形にまとめられるまでに、複雑な経緯をたどったことが作品に示されていますが、元寇という事実を視覚的に伝える貴重な作品です。

次に、豊臣秀吉や徳川家康などの歴史上の有名人たちがその伝来に関わっているものが含まれます。豊臣秀吉が禁裏の所蔵品を模したとの伝承がある「蔦細道蒔絵文台硯箱(つたのほそみちまきえぶんだいすずりばこ)」は、金銀の蒔絵による華やかなもので、桃山時代の気風をよく伝える蒔絵の名品として知られています。今日、全く同じ図様のものが3件、当館に伝えられています。また、秀吉による大坂城の備蓄金との伝承のある「黄金分銅(おうごんのぶんどう)」は徳川家康に引き継がれたといわれ、明治33年(1900)に尾張徳川家から皇室に献上されています。

また、江戸時代、永い太平の時期に、技巧の凝らされた工芸作品が作られます。その中でも、超絶した彫技による根付「象墜(しょうつい)」を紹介します。小さな根付の中に幾つもの楼閣が彫り表され、そこには880人もの人々や、鳥や動物などが彫り込まれています。

そして嘉永6年(1853)には、ロシア国使節プチャーチンが長崎に来航します。この出来事を描いた絵巻や、開国後、万延元年(1860)に初めて使節がアメリカ合衆国へ渡り、ブキャナン大統領から贈られたメダルなども紹介します。

これらの品々を生み出し、伝えてきた人々の想いに心を寄せ、その〝ものがたり〟を楽しむ機会となれば幸いです。