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館内展示

第22回
宮廷装束の美-江戸から明治へ-

平成12年(2000)9月23日(土) ~ 12月10日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第22回「宮廷装束の美-江戸から明治へ-」の展覧会図録表紙画像

三の丸尚蔵館の第22回企画展として、「宮廷装束の美-江戸から明治へ」を開催いたします。

日本の皇室が歴代、芸術・文化を深く愛好され、その奨励、発展に大きな力を注いでこられたことは広く知られています。その足跡は、今日でも日本の伝統文化の各分野に様々なかたちで生き生きと息づいていますが、ことに、皇室の伝統的な御装束には、日本文化固有の美意識が色濃く保たれているといえます。それらは、大陸の文化を取り入れて服制が定められた奈良時代以降、次第に日本の風上に即した独自性をあらわすようになり、その後は各時代ごとに多少の形状の変遷はみられるものの、基本的なありようは連綿と継承され続けてきた、まさに日本の宮廷文化の精華そのものなのです。

このたび公開する歴史的装束の数々は、そうした日本の宮廷装束の正統な流れのもとで江戸時代後期から明治期にかけて生みだされ、実際に孝明天皇、明治天皇、それに英照皇太后がお召しになられた貴重な品々ばかりで、現在も皇室の御所有品となっているものです。また、展示品のなかには、冠や石帯、檜扇、沓なども含まれており、装束のありかたを総合的に把握できるような内容となっています。さらに、江戸時代の公家装束の様子を伝える雛人形や、近代になり、洋装化の波に押されて急速に失われつつあった伝統的宮廷装束のかたちを詳細にとらえ、後世に記録として残すことを意図して制作された、当館所蔵の画帖《天皇・東宮御装束図》なども併せて展示いたします。

本展は、日蘭交流400年記念特別展として、本年の6月から8月にかけてオランダの国立ヘット・ロー宮殿博物館で開催され、好評を得た「皇室コレクションにみる 宮廷装束と意匠の美」展のいわば帰国記念展にあたるものですが、日本で公開するにあたっては、特に歴史的装束の分野に焦点をしぼり、それらに未公開の数点を加えた新たな構成としました。この展覧会を通じて、宮廷装束の美に親しんでいただくとともに、明治維新前後の歴史の転換期にあっても変わることなく守り伝えられてきた宮廷文化の粋に触れていただく機会となれば、幸いです。