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館内展示

第14回
ヨ―ロッパの近代美術-歴史の忘れ形見

平成9年(1997)1月7日(火) ~ 3月9日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第14回「ヨ―ロッパの近代美術-歴史の忘れ形見」の展覧会図録表紙画像

三の丸尚蔵館の第14回展示「ヨーロッパの近代美術一歴史の忘れ形見」を開催いたします。

明治時代の幕開けから昭和戦前期にいたる間に、帝室(皇室)および宮内省には、東洋、日本の古美術品や日本近代の多彩な美術作品とともに、欧州各国との皇室外交での贈答や御慶事の際の献上、日本政府もしくは帝室からの制作依頼、御買上など折々の機会を通じて、西欧の絵画、彫塑、工芸作品も少なからずもたらされてきました。それらは、記録から知られるかぎりでは、時々の同時代作品、すなわち19世紀以降の近代作品で大半が占められており、その一部は三の丸尚蔵館の収蔵品のなかにも引き継がれて現存しています。

本展は、このような当館所蔵の西欧近代のさまざまな造型作品のなかから、調査の結果、作者や制作年等が確定され、しかも美術史的な価値を認めることができると考えられる諸作品をまとめて紹介しようとするものです。

もっとも、これらは、ヨーロッパの近代美術の流れを展望し得る体系的なコレクションというわけではなく、ロダンの彫塑作品などわずかな例をのぞけば、個々の出品作品の作者も今日では本国ですら歴史に埋没してしまった人物がほとんどといえます。しかし、なかには、19世紀イタリアの画家ジョ・バッタ・フェラーリや1910年代前後に活躍したロシアのボリス・クストージェフ、あるいはベルギー後期印象主義の絵画作品のように、ここ数年の間に各国の近代美術史上で急速に見直しが図られ、再評価がすすめられている作家の代表的な作品や、一時代の特定の表現傾向を典型的に示す美術・工芸品も含まれており、このような興味深い作品の数々を当館が所蔵していることを明らかにし、ご覧いただくことは有意義なことと思われます。本展を通じて欧州との交流史のなかでかつて日本にもたらされ、その後長く忘れ去られていた美術作品の魅力を再発見していただければ幸いです。