終了
館内展示
第84回
正倉院宝物を伝える-復元模造の製作事業と保存継承
令和元年(2019)7月13日(土) ~ 9月1日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館
皇室と文化の関わりにおいて、1300年近くにも及んで伝世してきた正倉院宝物の保存や修理の歴史に対し、皇室、宮内庁が果たしてきた役割は非常に大きいものがあります。奈良時代、光明皇后によって東大寺の盧舎那仏に献納された聖武天皇御遺愛の品々を中心として集積された宝物は、朝廷からの勅使の封、さらには天皇親書の封が宝庫の扉に付けられて保護される中、時には曝涼で、時には権力者によって開封されることがありました。
そして、江戸時代には宝庫の修理と宝物の点検、修理等、宝物の保存への関心が高まり、明治時代には、政府による国内の文化財保存への積極的関与の方針を受けて正倉院宝物の調査も実施されました。明治16年(1883)からは毎年曝涼が行われることとなり、翌年から宮内省が宝物の管理を担当することとなって、本格的に宝物保存の措置が講じられていきました。そして昭和20年代以降は、各種宝物の学術調査が実施されるとともに、昭和47年(1972)からは宝物の材料や技法をできるだけ忠実に再現することを目的とした復元模造の製作が進められ、優れた製作技術が解明されることにもなりました。
さらに、平成の時代においては、上皇后陛下が大切に飼育されていた国産の古代種の蚕、小石丸による糸が、正倉院宝物の古代裂の復元において大きな役割を果たし、日本の文化財を後世に長く伝えていくうえで多大な貢献をしました。また、三の丸尚蔵館所蔵の鎌倉時代の絵巻の修理事業においても、小石丸の糸がその表紙裂の復元に活用されています。
そしてこの度、正倉院宝物の中でも特に有名な螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)の復元模造が完成し、製作当初の姿が再現されました。小石丸の糸を頂戴して製作された絃が装着されたこの名品の復元は、現代の英知と技術の結集と言えましょう。
本展では、これら復元模造の品々を通して、素材や技術をも含めた日本文化の伝統を継承することの重要性とその意義を紹介します。