終了
館内展示
第31回
工芸風土記 弐 -木・竹・漆工の世界
平成15年(2003)7月5日(土) ~ 9月7日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館
「工芸風土記」シリーズの第2回目の展覧会として、木・竹・漆の3分野の工芸作品を特集します。本展ではこれらの多彩な作品の数々を、地域ごとに異なる技法や材質などの特色からとらえてみます。そして、それらを存分に生かした伝統的な技法による制作活動の中で、優れた技量や独自の造形によって高い評価を受けてきた作家の展覧会出品作にも注目し、伝統の継承に作家が果たした役割をも紹介します。
まず木工の分野では、桑や黄楊(つげ)の良材の産地として知られる三宅島、御蔵島の木材を用いた指物や櫛、また明治期以降、富山に伝えられた木象嵌の技法による作品などが挙げられます。
一方、竹工では、大正10年代から昭和初期にかけて各地で制作された花籠の数々が、技巧を凝らした伝統的な技を伝える作品群といえます。その中には個性的な造形を創出し、工芸界に竹工芸の基盤を固めた先駆者、飯塚琅玕斎 (ろうかんさい)の作品も含まれ、その次の世代に続く生野祥雲斎(しょうのしょううんさい)らの作品をともに並べることで、高度な技術を伝承しながらも、造形表現が変化していった様子を見てとることができるでしょう。
そして漆工の分野では、津軽の変わり塗、会津や金沢の蒔絵をはじめ、香川、久留米、沖縄など各地の多彩な技法による作品を紹介いたします。特に輪島の沈金(ちんきん)技術が世に広く知られる契機となった前大峰(まえたいほう)の帝展入選作のうち、昭和7年の帝展出品作は、その優れた彫技に魅せられるに違いありません。
本展が、各地域に根ざした特色ある技法によるこれらの作品を通して、日本に古くから身近に存在していた温かみや柔らかさを感じさせる工芸素材-木・竹・漆の魅力に触れる機会となれば幸いです。