終了

館内展示

第5回
絵巻-蒙古襲来絵詞、絵師草紙、北野天神縁起

平成6年(1994)10月8日(土) ~ 12月11日(日)
宮内庁三の丸尚蔵館

第5回「絵巻-蒙古襲来絵詞、絵師草紙、北野天神縁起」の展覧会図録表紙画像

わが国の文化遺産の中でも、「絵巻」は日本的特質がとりわけ豊かなものの一つです。絵巻の制作は、宮廷貴族を中心とする王朝文化が華開いた平安時代後期には盛んとなり、作り物語や説話物語が宮廷絵師や貴顕らによって絵巻の形に調えて鑑賞され、『源氏物語絵巻』のような名品を生み出しています。鎌倉~室町時代にかけての中世には、前代の伝統の継承と共に、社寺縁起(しゃじえんぎ)や高僧伝(こうそうでん)、軍記(ぐんき)物語、さらにはお伽草紙(とぎのそうし)などがその題材として加わり、公家、武家はもちろん、庶民へまでその鑑賞は拡がりました。今回の展示で紹介する絵巻は、絵巻の内容や表現が実に多彩な展開を遂げたこの時期の作品です。

「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)」は、鎌倉時代後期、文永11年(1274)と弘安4年(1281)の2度にわたる元寇の記録としてことに有名である。「絵師草紙(えしのそうし)」は、貧しい宮廷絵師に起こった事件を表現豊かに描くユニークな絵巻です。「北野天神縁起(きたのてんじんえんぎ)」は、菅原道真(すがわらのみちざね)の伝記とその怨霊説話、そして北野社の創立の由来と利生記(りしょうき)についてのもので、中世の天神信仰の隆盛に伴って制作された同絵巻の諸本うち、別々の二系統に属します。

これまで公開の機会が少なかった作品を、それぞれのストーリーと共に、描写や筆跡などの表現をじっくり鑑賞していただける良い機会になれば幸いです。