終了
館内展示
第82回
明治美術の一断面-研ぎ澄まされた技と美
平成30年(2018)11月3日(土) ~ 12月24日(月)
宮内庁三の丸尚蔵館
明治時代の美術は、開国後間もない社会的な混沌と激動の時代であったその初期を経て、様々な制度を整えつつあった前半期に大きな変貌を遂げました。日本美術の長い歴史の中にあって、それはわずかな期間に起こった急激な変化であったと言えるでしょう。本展では、明治10年代から20年代に制作された絵画、彫刻、工芸、写真を中心に取り上げることで、この時期の造形表現に見られる特質を浮かび上がらせます。
この時代の美術の特質として、まず注目されるのは主に工芸や彫刻の分野に顕著に見られる卓越した技巧主義です。江戸時代に成熟した高度な技術を引き継ぐ精緻な表現によって、新しい時代の変化に応じた作品の数々が生み出されました。一方、文明開化の風潮によって積極的に採り入れられた西洋のイメージや技法は、それまでの時代とはまったく異なる表現を生み出しました。それは一言で表わすならば迫真的表現と呼ぶべきもので、技巧主義とも結び付いて平面作品、立体作品に関わらず様々な素材、技法のもとで、文字通り真に迫った表現が追究されました。また、幕末から技術が流入した写真は、人や物をありのままに写すという記録的な性格から、徐々に絵画的な表現を目指すようになりました。
本展では、近年、“超絶技巧”と注目されている明治時代の造形表現に焦点を当てながら、一つ一つの作品のどこがそれほど驚異的なのかを解き明かし、この時代の美術の本質に迫ります。ご覧になった方々の明治美術に対する興味や理解がさらに深まれば幸いです。